「朱里!? 」
「アルトも一緒にいるの?」
「アルトは……」
再び会わせても大丈夫だろうか。どうしたら良いのかな――。考えていると朱里は外出用端末を覗き込んだ。
「アルトいた! やくそくしたもんね!」
朱里は満面の笑みで、画面に映るアルトを見た。まさか、こんなところで、しかもアルトが一緒にいるタイミングで偶然会うなんて思わなかったな。
「や、くそ、く……?」
アルトが少し困惑したように呟く。そしてキョトンとした顔で朱里を見つめた。
先生に「朱里ちゃん、あっちに戻るよ?」と朱里は声を掛けられた。だけど朱里は「アルトと遊びたい」と、駄々をこねる。先生をじっと見ていた私の視線に気がついた先生は、私に対して申し訳なさそうにお辞儀をした。私も口角を上げてお辞儀を返した。
私は頭を下げつつ、内心冷や汗をかいていた。このまま朱里がアルトのことを先生にペラペラ喋ったら、感情を持つAIだという秘密がバレる可能性がでてくる。どうしよう……。
「アルト! みんなといっしょにあそぼ!」
朱里のキラキラした目と、アルトの少しドキドキして期待も寄せているような表情を見ていると、遊ばせてあげたいなって気持ちが少し湧いてくる。朱里がリードしながらふたりで遊ぶ光景も頭に浮かぶ。
でも、ここで朱里とアルトを一緒に遊ばせるのは、危険だと思う。
「ねぇ、あかりちゃん、なにしてるの?」
背後から女の子の声がした。振り向くと園児集団がいた。そして全員でアルトを覗き込む。
「この子ね、アルトっていうの」
朱里がアルトを紹介した。
「アルト、やっほー!」
「かわいいー!」
「なにしてるの?」
次々と話しかけられ明らかに困ったような表情をしているアルト。
「あの……その……」
「えっ! おはなしできるの?」
「わたしもおはなししたい! わたしのいえ、ここからちかいの」
「アルトのおうち、どこ?」
あぁ、見てられない。私はアルト用端末の画面をささっと子供たちから隠し「そろそろ、帰るね」と伝えた。
「えー、まだおはなししたい」
「アルトとあそびたい!」
どうしよう、こまったな……。
「お姉さん、帰るからさようならしようね。あっちの、みんながいるところに戻るよ! 誰が一番につくかな?」
こまっていると、こういう場面になれていそうな先生が助け舟を出してくれた。園児たちは一斉に走り出した。先生はこそっと私に「お騒がせしました」と眉を下げながら会釈をすると園児たちの後を追った。
「あかり、たのし、そ……」
その言葉に、胸がキュッと締め付けられた。アルトも、朱里と一緒にいたいと思っているのかもしれない。そうだよね、きっと同じ年頃の子と遊びたいと思うよね。
まだ何も事情の知らない、感情を持つAIの純粋な願い。だけどアルトの秘密を守る責任が私にはある。
「ごめんね、アルト」
「どう、して、ごめん?」
アルトの質問に、胸が痛む。私は上手く答えられなかった。
「アルトも一緒にいるの?」
「アルトは……」
再び会わせても大丈夫だろうか。どうしたら良いのかな――。考えていると朱里は外出用端末を覗き込んだ。
「アルトいた! やくそくしたもんね!」
朱里は満面の笑みで、画面に映るアルトを見た。まさか、こんなところで、しかもアルトが一緒にいるタイミングで偶然会うなんて思わなかったな。
「や、くそ、く……?」
アルトが少し困惑したように呟く。そしてキョトンとした顔で朱里を見つめた。
先生に「朱里ちゃん、あっちに戻るよ?」と朱里は声を掛けられた。だけど朱里は「アルトと遊びたい」と、駄々をこねる。先生をじっと見ていた私の視線に気がついた先生は、私に対して申し訳なさそうにお辞儀をした。私も口角を上げてお辞儀を返した。
私は頭を下げつつ、内心冷や汗をかいていた。このまま朱里がアルトのことを先生にペラペラ喋ったら、感情を持つAIだという秘密がバレる可能性がでてくる。どうしよう……。
「アルト! みんなといっしょにあそぼ!」
朱里のキラキラした目と、アルトの少しドキドキして期待も寄せているような表情を見ていると、遊ばせてあげたいなって気持ちが少し湧いてくる。朱里がリードしながらふたりで遊ぶ光景も頭に浮かぶ。
でも、ここで朱里とアルトを一緒に遊ばせるのは、危険だと思う。
「ねぇ、あかりちゃん、なにしてるの?」
背後から女の子の声がした。振り向くと園児集団がいた。そして全員でアルトを覗き込む。
「この子ね、アルトっていうの」
朱里がアルトを紹介した。
「アルト、やっほー!」
「かわいいー!」
「なにしてるの?」
次々と話しかけられ明らかに困ったような表情をしているアルト。
「あの……その……」
「えっ! おはなしできるの?」
「わたしもおはなししたい! わたしのいえ、ここからちかいの」
「アルトのおうち、どこ?」
あぁ、見てられない。私はアルト用端末の画面をささっと子供たちから隠し「そろそろ、帰るね」と伝えた。
「えー、まだおはなししたい」
「アルトとあそびたい!」
どうしよう、こまったな……。
「お姉さん、帰るからさようならしようね。あっちの、みんながいるところに戻るよ! 誰が一番につくかな?」
こまっていると、こういう場面になれていそうな先生が助け舟を出してくれた。園児たちは一斉に走り出した。先生はこそっと私に「お騒がせしました」と眉を下げながら会釈をすると園児たちの後を追った。
「あかり、たのし、そ……」
その言葉に、胸がキュッと締め付けられた。アルトも、朱里と一緒にいたいと思っているのかもしれない。そうだよね、きっと同じ年頃の子と遊びたいと思うよね。
まだ何も事情の知らない、感情を持つAIの純粋な願い。だけどアルトの秘密を守る責任が私にはある。
「ごめんね、アルト」
「どう、して、ごめん?」
アルトの質問に、胸が痛む。私は上手く答えられなかった。



