ヤンキー高校に転入した私

規則的な振動が心地良く、すごく暖かい──目を開けた私は、一瞬何が起きているのか分からなかった。しかし徐々に自分が置かれている状況を自覚して、とてつもなく恥ずかしくなった。

「ごめん、大和くん!降ろして。歩けるから!」

大和くんは立ち止まって私を下ろしてくれた。肩には大和くんの学ランがかけられていた。返そうとすると大和くんに止められた。大和くんは胸の辺りを指さしている。見下ろすと、ボタンが3つも取れていた。何をされそうになったのか考えて体が震えた。

「家まで送ってやる。」

私は大和くんと並んで歩き始めた。

「みんなはどうなったの?」
「知らねー、薫がなんとかしてんじゃね?」

薫くんは閃爆に行こうとしていた。1組から抜けることに留まらず、学校から出て行こうとしていたのだ。大和くんは知っていたのだろうか。

「大和くん……」
「お前、あいつ振ったんだって?」

「え!あ、ま、まぁ……うん……はい……」

突然聞かれて、辿々しい答えになってしまった。

「薫は優しいよ。気が利くし、人当たりも良い。」

それはよくわかっている。でも私が好きなのは大和くんだ。

「薫くんと付き合って欲しいってこと?」

思いがけずそんなことを口走ってしまった。そんなことを言いたいわけじゃないのに!

「そーゆー訳じゃねーけどさ。」

薫くんと一緒にいたら、不満なんてないだろう。でも私が好きなのは薫くんじゃない。

「私は大和くんの方がいい。優しくなくてもいいし、気が利かなくても良い。仲間思いで、みんなに囲まれて笑ってる大和くんが好き。」

私は何を言っているのだろうか。顔がやたら熱くなってあたふたしてしまう。

「ご、ごめんね、変なこと言って。これ、ありがとう。じゃあね。」

私は大和くんに学ランを押し付けると、逃げるように走った。告白するつもりなんてなかった。大和くんが薫くんを勧めるからつい言ってしまった。

(言っちゃったよぉぉぉ!もう!)

家に帰っても顔が赤いままだった。