ヤンキー高校に転入した私

私はゆっくり目を開けた。手を後ろで縛られて床に寝かされている。気づかれないように目を動かして辺りを見回すと、どこかの倉庫みたいだった。少し先に2人の男が立っている。赤いモヒカンと緑のモヒカンだ。

（クリスマスかよ……）

でも全然笑えない。床から冷たい冷気が伝わってきて寒い。モヒカンの2人は高校の制服を着ている。目を凝らすとブレザーのエンブレムにSENBAKUと書かれていた。

（閃爆学園(せんばくがくえん)！？）

閃爆学園は烈蘭高校に並ぶヤンキー高校。どうして私が閃爆のクリスマス野郎に捕まらなければならないのだろうか。そう思っていると、モヒカンの2人が突然こちらを向いて、私は慌てて目を瞑った。

「なぁ、本当にこいつで合ってんの？なんかピ──じゃね？」
「こんな奴のどこがいいんだか。重いし……ははは。」
「趣味わりぃよな。ピ──女なんて。」
「まぁ、1人しかいませんから、仕方ないんでしょうね。」
「しっかし、ピ──だし、ピ──で、ピ──だよな。ははは！」
「あはははは！」

（くそ野郎がぁぁぁぁぁ！）

聞き捨てならない言葉が聞こえてきて、心の中で放送禁止用語を大声で叫んだ。今すぐに掴みかかってぶん殴りたいけど動けない。あぁ悔しい！

私は気を失っているフリをしながら聞き耳を立てていると、赤いモヒカンは大門寺という閃爆学園の組長の1人で、緑のモヒカンは満という名の大門寺の右腕的な存在のようだとわかった。

閃爆学園とはいえ2人しかいないなら、逃げられる隙があるかもしれない……そう思ったけど、諦めざるを得ない光景を目の当たりにした。倉庫の中に武器を持った大門寺の子分たちがゾロゾロと現れたのだ。

（武器を使うなんて最低。）

烈蘭の試合は素手が原則。ヤンキー同士の試合は、正々堂々行われるべきだ。私はこれまで何度も試合を観戦してきたおかげで、精神がヤンキーに近づいたのかもしれない。