ヤンキー高校に転入した私

「大丈夫か?」
「ぎゃぁぁぁぁぁ!」

「っるせーな。」

聞き慣れた声がして顔を上げると、そこにいたのは大和くんだった。

「大和くん……!」

安心したら目から涙が溢れ出した。

「げっ!なっ、泣くなよ……」

大和くんはポケットを漁って、ハンカチを取り出した。私は大和くんのハンカチで涙を拭った。ハンカチがぐしゃぐしゃで、ちょっとチクチクする。

「このハンカチ……ぐしゃぐしゃだね……うぅっ……」
「うるせーな。」

大和くんは涙が落ち着くまで、何も言わずにそばにいてくれた。

「なんで1人なんだ?薫はどうした?」
「なんか用があったみたいで……」

こんなことになるとは思わなかった。薫くんは本当に私のボディーガードとして隣にいてくれたんだと実感した。

「これ持ってろ。」

大和くんは私の右手に何かを握らせた。手を開くと、金色のバッヂだった。

「いいの?」
「あぁ。」
「ありがとう!」

私はバッヂを見つめた。これは1組のクラスメイトたちが襟元につけているバッヂ。1組の証だ。

「家は……西だよな?」
「うん。」

夢中で走っていたから自分がどこにいるのかわからなかったけれど、大和くんは私の家の近くまで一緒に歩いてくれた。

無視され続けた大和くんと話すことができて、一緒に帰れるなんてこれ以上ないシチュエーションだ。でも今は見知らぬヤンキーに絡まれたことの恐怖が勝ってしまって、この状況を楽しめる余裕がない。それが悲しくて悔しかった。

「もう1人で帰るな。」
「うん……」

私は手の中にあるバッチを握りしめた。