ヤンキー高校に転入した私

次の日の朝、家を出ると少し先に薫くんが立っていた。

「おはよう、薫くん。」
「おはよう、紗里奈。良かった。あんなことがあったから来ないんじゃないかと思ってたよ。」
「怖かったけど、休むほどじゃないかな。」

でも、できることなら二度と絡まれたくない。私は薫くんと並んで歩き始めた。

薫くんと話していると、ヤンキー高校に通っていることを忘れてしまいそうになる。薫くんとの会話は普通の高校生の会話だ。でも、学校が近づくにつれてドクドクと心臓が脈打ちはじめた。周囲にヤンキーが増えてきたからだ。ヤンキー高校に通っているから仕方ないけれど、どうしても昨日の怖さを思い出してしまう。

胸を押さえて小さくなりながら学校に向かうと、門の前に数人のヤンキーが集まっていた。

「よぉ、転入生さ〜ん?」
「顔見せてくれよ。」
「お〜い。」

明らかに揶揄うような口ぶりで声をかけてきた。そちらには目を向けず無視して歩いていると、耳を塞ぎたくなるような言葉が聞こえてきた。それでも教室へ向かおうと歩いていると、ヤンキーたちは笑いながら追いかけてきた。

「朝から何してるわけ?」

私は思わず振り返った。

「大和さん!?」
「やべっ!」

大和くんは逃げようとするヤンキーの1人を捕まえて胸ぐらを掴んだ。ヤンキーの顔からは血の気が引いている。

「あいつら1組なんだけど。わかってる?」
「は……はいっ!すんませんっっっ!」

大和くんがヤンキーを放り投げると、揶揄ってきたヤンキーたちは一斉にその場から走り去った。

「行こう、紗里奈。」
「う、うん……」

私は大和くんが気になりながらも、薫くんと教室へ向かった。