カラフル



 自己紹介で既に魅せたとおり、転入生は容姿だけでなくコミュニケーション能力にも長けていた。

 4限の授業が終了し昼休みを迎えた頃には、まるで昨日までもこのクラスにいたかのような存在感を放っていた。

 今も教室の中心でみんなに囲まれている。その輪の中には蘭の姿も見えた。


 ――さすが、蘭。もう仲良くなってる。

 響き渡る楽しそうな笑い声を聞きながら、荷物を抱えて教室を後にする。



 50分間の昼休みは、いつも中庭で過ごしていた。

 9月に入ったとはいえ外はまだ蒸し暑かったが、他の場所に比べて中庭はかなり風通しがよかった。木陰に入るとふわっと風が通り抜ける。エアコンで冷え切っていた身体にはこの生温い風が丁度よい。


 それに、教室やグラウンドとは違い、人がほとんど通らないこの静けさが好きだった。


 いつものように1人で自由気ままに昼食を済ますと、お弁当箱を手早く片付けて代わりにトートバッグの中からスケッチブックを取り出した。ページを捲って3日前から描いている絵の続きを描き始める。
 
 誰にも邪魔されずにゆっくりと絵を描けるこの時間が、学校生活の中で1番好きな時間だった。


 ――あ、ここ、もう少し明るい色の方が合うかな。

 スケッチブックを少し上に掲げて首を捻る。


「やっぱり上手いなぁ」