カラフル

 驚いたことに意見をもらえたのは昼休みだけではなかった。5時間目の終わりや下校の前にも、今度は別のクラスメイトが意見をくれた。自分から絵が見てみたいと話しかけてくれた人もいた。


 昼休みに教室の中心で内田が大きな声を出したのを聞いていたからだろう。その影響はかなり大きかった。

 ――もしかして、陽はこうなることを見越して、最初に内田に声を掛けたのだろうか。


 メモを取っていた手を止め、正面に座っている彼の顔を盗み見る。


「書けた?」

「えっ、うん」

 急に声を掛けられて、慌てて返事をする。


「どんな? ちょっとは参考になりそう?」

 頷く私を見て、陽が表情を緩めた。

「そっか。よかったわ」


 陽が机に手をついて立ち上がる。

「俺、そろそろ行かなあかんのやけど……凛ちゃんは、もう帰る?」

 首を縦に振る。


 陽は今日も委員会があるらしい。それでも直前まで私のために残ってくれた。


「ほな、また明日な!」

 ――行ってしまう。


 考えるより先に体が動いていた。走って、教室を出て行こうとする陽の制服の裾を掴んだ。

「……どしたん?」

 びっくりした顔をして、陽が振り返る。


 今しかない。今言わなかったら一体いつ言うんだ。
 
 自分を鼓舞して大きく息を吸い込む。


「陽……ありがとう」


 たった一言なのに驚くほど声が震えた。


 名前を呼ぶこともお礼を言うこともこんなにも難しかっただろうか。きっと今の私は凄く真っ赤な顔をしているにちがいない。


 陽はそんな私を見て一瞬驚きの表情を見せたが、すぐに「どーいたしまして」と笑った。