カラフル

 彼は弱ったなぁという風に頭を掻くと、再び持っていた紙の束を上から捲り始める。

 いつもお喋りな彼がこんな風に口を閉ざすのは、真剣に何かを考えているときだ。まだ数日の付き合いだけど理解できた。その「何か」というのが、今は私のためのものであることも。


「凛ちゃん、あのな」

 しばらく経って陽が上擦った声で私の名前を呼んだ。何か閃いたらしい。

 鉛筆を動かす手を止めて顔を上げる。


「見てもらおうや、みんなに」

「見てもらうって……それを?」

 陽が持っている原画の束を指さすと、彼は大きく頷いた。


「俺1人やったら意見も限られてるし、センスもないし、あんま参考にならんと思うんや。せやから、みんなにも意見聞いてみよや!」

「みんなに……か」


 良いアイデアだとは思う。

 パネルは体育祭当日、審査員の得点と生徒からの投票結果を合計して審査することになっている。だから今のうちに第三者の意見を聞いておくのは非常に参考になる。


「でも……」

 すぐにはいいねとは言えない。言えるはずがない。

 私の絵に対してみんなが真剣にアドバイスなんてくれるだろうか。
 そもそも、そんなお願いを聞いてもらえるだろうか。
 虫がよすぎはしないだろうか。

 今まで何の関わりも持たずにずっと避けてきたのに、今更――。


 陽の手がポンポンと私の頭を撫でた。

「大丈夫やって! みんな、ちゃんと考えてくれる思うで。凛ちゃんがこんだけ頑張っとるんやから! 俺も一緒に交渉するし、な?」

 私の顔を覗き込んで優しく微笑む。

 彼の顔を見ていると不思議と心の中を占めていた不安がどんどん掻き消されていく。


「じゃあ、お願い」

 小さく返事をすると、陽は「任せて」と力強く言い切った。