カラフル

 責任者を辞退しなかったのは、クラスの空気に飲まれたというのも少なからずある。

 陽と蘭と坂本先生の話の後は、みんなが一変して「私が適任だ」と言い張った。「反対なんてしたら自分が責任者になってしまうかもしれない」というリスクも後押しし、大半のクラスメイトが私を責任者に推薦した。

 ――ただ、辞退しようと思えば辞退はできた。

それを踏み留まらせたのは陽のあの言葉だ。

 『幸せな気持ちになれる』だなんて、私の描く絵をそんな風に表現してもらえたのははじめてだった。嘘偽りのない彼の言葉が純粋にうれしかった。


「大丈夫。心配しなくても決まったからには一切手は抜かない。責任者の仕事は(まっと)うする」

「ほんまに?」

 先程までとは打って変わって、陽の表情がぱっと明るくなる。


「分かったら早く行きなよ。今日から早速、実行委員会なんでしょ? ちゃんとパネル制作の話も聞いてきてよ」

「うん。任せてや」

 陽が満面の笑顔で手を振りながら走り去っていく。その後ろ姿を見送って、止まっていた足を前に進める。


 目指す場所はただ一つだ。