カラフル

 一部始終を見ていたクラスメイトは皆、唖然としている。

「いやぁ……陽。それはちょっと」

「いくら一ノ瀬のこと放っておけないからって」

「さすがにねぇ? 私たちだけじゃなくて団の勝敗もかかってるわけだし」


 クラスメイトの引き攣った表情や反対意見を物ともせず、陽は話を進める。

「え、俺、本気で推薦しとるねんけど。みんな、見たことないん? 凛ちゃんの絵」


 教室内がざわつく。

「絵って何?」
「一ノ瀬、絵なんか描いてんの?」

 絵を描いていることすら認知されていない。クラスメイトの私に対する関心の低さも、当然と言えば当然だろう。同じクラスになってから、今の今までまともに会話なんてしたことないのだから。

 それに、高校に進学してからは教室でスケッチブックを広げたことは一度もない。

 絵を描いているとわざわざ公言しても良いことなんて一つもない。馬鹿にされて終わりだ。そんなの分かり切っているから誰にも言っていない。

 だから今でも絵を描き続けているなんて、きっと蘭も知らないだろう。


「なんや。描いとることすら知らんの? 凛ちゃんの絵、ものすごい上手いねん。でも……ただ上手いだけやないと思う」

 特に大きな声でもなかったのに、陽の声はやたらと響いた。