カラフル

 5限の開始時刻に少し遅れて、坂本先生が大欠伸をしながら教室に入ってくる。

 きっと昼休みは準備室に籠って寝ていたのだろう。頬に薄っすらと残った線がそう物語っていた。


 挨拶を済ませると、先生は手に持っていた数枚のプリントを机の上に乱雑に置いた。


「今日は体育祭の実行委員を決めるぞ」

 体育祭は毎年10月中旬に開催される。もうそんな時期か、と思いながら教室内を見渡す。

 周りで体育祭の訪れを喜ぶ声と、実行委員を嫌がる声とが入り混じる。


「実行委員は男女1名ずつで、体育祭までの実行委員会に参加できて、クラスの指揮がとれるやつ。やりたい奴はいるか?」

 坂本先生の呼び掛けに、教室内は途端に静かになる。


 昼休みや放課後に行われる複数回の実行委員会への強制参加と、当日までの責任の重さ。拘束時間のかなり長い実行委員を好んでやろうという者はまずいない。昨年も決定までにかなり時間がかかった記憶がある。


「やっぱりいないか。仕方ないなぁ。推薦にするか、くじにするか、それともじゃんけんにするか」

 何だか楽しそうに選出の方法を挙げていく先生の声に、各所で悲鳴が上がる。


「実行委員なんかになったら部活行けねぇじゃん。部長に殺されるわ」

「放課後はバイトあるから無理だって」

 各々が実行委員を断る理由を口々に言い合う中、2本の手がほぼ同時に挙がった。1本は蘭。もう1本は陽だった。


 再び教室内が静まり返る。

「お、2人か。じゃあ一ノ瀬から」

 みんなが蘭に視線を送る。