カラフル

 おそらく彼は後者だ。でも100パーセントそうだとは言い切れない。


 じゃあ、もし、前者だったら――?

 別にそれでもいい。一緒に過ごすことがなくなれば、お弁当だって以前のように一人で伸び伸びと食べられる。読書も絵を描くことも自分の好きなことをゆっくりできるし、何より見ず知らずの人に陰口を言われることもなくなる。

 今までもずっと一人でそうやって過ごしてきた。全然平気なはずだ。

 自分にそう言い聞かせるのに、心の中を占めていくのは大きな不安だった。


 ――今彼がいなくなれば、私は、今まで通りの生活にすんなりと戻れるのだろうか。

 そう考え込んでしまうくらい、陽と過ごす時間が特別なものになってきていることを受け止めざるを得ない。

 このタイミングで気付くとは、なんて皮肉なものだろう。



 昼食を終えていつものように絵の続きを描いていたものの、集中力なんて微塵もなかった。10分も経たないうちにスケッチブックを閉じて、鉛筆を投げるようにして筆箱にしまい込む。

 グルグルと考えても仕方ないことをいつまでも考えてしまう。さっき耳にした言葉が、頭の中をチラついて離れない。


 ふと視線を感じて顔を上げると、キョトンとした陽の顔が「今日は終わり?」と問いかけてくる。さっきまで隣で貸していた本を読んでいたと思っていたのに、いつの間にか私が描く絵を眺めていたらしい。

「楽しい?」

「ん?」

「そうやってただ眺めているの」

「うん」

 1ミリの迷いもない返事に思わず苦笑いを浮かべてしまう。他人が絵を描くところなんて、普通は見ていても面白くなんてないはずなのに。