カラフル

 重い足取りで中庭に向かうと、木陰に座り込んでいた陽が私を見上げて顔を綻ばせた。まるで飼い主の帰りを待ちわびた犬みたいだ。

「遅いから今日は来ぇへんのかと思ったわ」

「……ちょっと色々あって」

 人ひとり分の間を空けて彼の隣に腰を下ろす。


 中庭は今日も閑散としていた。

 私と陽の他には3人だ。ベンチで読書をしている男子生徒と、残りの2人はおそらくカップルだ。遠く離れた芝生の上で楽しそうにお弁当を食べていた。


 いずれも先程トイレにいた人物ではなさそうだと確認して胸を撫でおろす。こんな風に陽と2人で過ごしているところを見られたらまた批判の嵐だ。


『蘭のほうだったらまだ分かるよ』

 さっき聞いた言葉を頭の中で反芻(はんすう)する。仮定の話をしてもキリがないけれど、もし一緒にいるのが蘭だったらみんなは何も言わないのだろうか。――きっと言わないだろうな。

 結論は考えずともあっという間に出てしまう。


「なんかあった?」

 箸が進んでいない私を見て、陽が心配そうに声をかける。

「なんでもない」と首を横に振って、箸でミニトマトを摘まむ。

 咄嗟に誤魔化した理由は自分でもよく分からなかった。「あんたが私に構うせいで嫌な目にあった」と、彼を責めることだってできたはずだ。


 もしそう伝えたら彼は何と答えるだろうか。

「凛ちゃんがそんな思いするんやったら、もう一緒におるんやめるわ」と私と距離をとるだろうか。

 それとも「心配やから、なるべく一人で行動せんとって」と今まで以上に行動を共にしたがるだろうか。