カラフル

 息を殺してドア越しに耳を澄ます。

「特別感出しちゃってさ、ほんとにムカつく」

「確かにね。今まで誰とも話してなかったくせにねー」

「陽くんとだけは会話するとか、相手選んでんじゃねぇよって感じ」


 ああ――そういうことか。

 彼女たちがどうして私に怒っているのか瞬時に分かる。でも、一方的にそんな怒りをぶつけられても困る。


 私が今まで誰とも会話しなかったのは、特に誰からも話しかけられなかったからだ。用事があれば相手が誰であろうと最低限の会話はしていたし、別に相手を選んでなんかはいない。

 それと付け加えると、自分から陽に話しかけたことは一度だってない。話しかけてくるのはいつも陽だ。


 ――なんてね。

 今すぐこの扉を開けて、そう反論できたら楽なのに。

 でも、そんなこと口が裂けても言えるわけがない。言ったらまさに火に油を注ぐようなものだろう。


「蘭のほうだったらまだ分かるよ。でも、なんであいつなわけ?」

「ただ浮いてるから構ってあげてるだけでしょ。陽くんは優しいから」

「それもそうだよね。せめてクラスが一緒だったらよかったのに。あーもっと仲良くなれる方法ないかなぁ」


 彼女たちは好き勝手にしばらく喋った後、バタバタと足音を立てて出て行った。

 数秒待ってからゆっくりドアを開ける。静まり返った空間に建て付けの悪いドアが鈍い音を響かせる。


 陽がモテるのも、以前から私がよく思われていないということも、十分分かっている。しかし、悪口を言われている場面に遭遇したのは初めてで、たかが悪口とは思うけれど全く気にならないと言えば嘘になる。

 あれほどまで彼女たちが言うのは、きっと相手が私だからだ。