カラフル

「またここで食べるの?」
「うん」

「……教室で食べたらいいのに」
「ええやん。俺は凛ちゃんと一緒に食べたいんやけど」

 彼と一緒にお昼を食べているところなんて誰かに見られたら面倒極まりないのに。


「……私は一緒に食べたくない」

「ひっどいなぁ」
 
 突き放すような私の言葉も何てことないという風にけらけらと笑い飛ばす彼を見て、深く溜め息を吐く。


 蘭が今朝言っていた「大体の人」の中に、どうやらこの佐倉陽という人物は当てはまらないみたいだ。

 どれだけ冷たく接しても懲りずに何度も話しかけにくる。教室内でもそれ以外の場所でも。朝登校してきたときも、休み時間に一人で本を読んでいるときもだ。

 つい先日も、本を読んでいる私の横で「凛ちゃんっていつも本読んどるよな?」「なんて本?」「どんな話なん?」「おもろいん?」と質問のオンパレード。

 あまりにもキラキラした目で質問してくるから、最初は渋々受け答えしていたものの、だんだん面倒臭くなってきて、最終的に「貸してあげる」とこの本を手渡したのだ。


 それはもちろん「貸してあげるからこれ以上話しかけてこないでくれ」というニュアンスを含んでいたのだが、「やったぁ」と彼は目を輝かせてお礼を言ってくるもんだから調子が狂う。


 でも寝不足になるくらい読み耽り、「凜ちゃんのおすすめしてくれる本、ほんまにおもろいわ」なんて面と向かって言われたら、まあ、正直悪い気持ちはしない。