カラフル

「まさか。本気で言うてる? 俺があれだけの話のために、昼飯も食わんとわざわざ凛ちゃんのことを探し回っとったと思っとるん?」

 そんなの知らないよ、そっちが勝手に探してたんでしょ、と思いながら彼を見る。


「凛ちゃんが俺のことを覚えてへんのは、よう分かったし、もう過去の話はええねん。覚えてへんのやったら、これから仲良くなったらええんやと思って」

 ニコニコと話しかける彼とは対照的に、私は乾いた笑いを浮かべた。

 仲良くなるって誰と誰が? 
 私と? 彼が?

 一体何のために――?


「……そういうのいいから。どうせ私のこと、1人でいる可哀想な子だとでも思ったんでしょ? 余計なお世話よ。私は別に仲良くなりたいだなんて思ってないから」


 みんな、そうだ。いつもそう。

 ちょっと優しくして偽善者ぶって――でも用事が済んだら適当な理由をつけて離れていく。そんな偽りの優しさなら(はな)から要らない。


「そんなんちゃうよ」

「嘘ばっかり。それ以外に私と仲良くなる理由なんてないでしょ」

「理由かぁ」

 彼がぽつりと呟いて天を仰ぐ。


「俺が、凛ちゃんのこと、好きやからかな」