カラフル

 絵を描いているところを見られて、おまけにスケッチブックまで奪われた。

 そう思って慌てて取り返そうとしたけれど、彼からしてみたら忘れ物を拾っただけだ。それに、もし返してくれようとしていて、この時間まで私が戻ってくるのを待っていてくれていたのだとしたら――。


「……ごめん」

 急にきまりが悪くなって謝罪の言葉を口にする。「別に怒ってへんで」と彼はくすっと笑う。

「大事なもんなんやろ? これ」

「うん……よかった。あって」

 差し出されたスケッチブックを両手で受け取る。


「いつ拾ったの?」

「昼休み。凛ちゃんが走って行った後」

 やっぱりあの時忘れていたんだ。私の予想は間違ってなかった。


「だったらもっと早く教えてくれたらよかったのに」

「ちょっと意地悪したくなったんよなぁ。逃げへんって約束したのに、結局逃げられてもうたから」

 視線を泳がせる私を見て、彼はふっと口角を上げる。

「冗談やで?」


 そして、今度は真剣な顔で言い放つ。

「すぐに返さんかったんのは、ただ、凛ちゃんと2人で話す時間がほしかっただけやねん」

「話すって、話ならもう終わったじゃない」


 3年前に会ったことがあった。彼は覚えていたけど、私は覚えていなかった。

 ただそれだけだ。これ以上一体何を話すことがあるのだろう。