女房達が一層華やぎます。
…っ。
東宮様…
東宮様…
零れそうな涙をこらえて「突然とは、お人が悪うございます…」と小声で申し上げました。
「私の訪れで、いつぞやのように弾きやめてしまわれたら残念ですので。」
そう仰って微笑む東宮様は、紛れもなく私の愛する東宮様です。
東宮様はいつぞやのように、近くにいた女房から事をお借りになってお戯れに弾き始めました。
今は、その女房が顔を赤らめている事も東宮様がその女房に微笑まれた事も気になりません。
あんなに恋しかった東宮様が、目の前にいらっしゃる…
そんな些細な事は、この大きな幸福に影を落とすには小さすぎました。

