平安物語【完】




―…翌朝

今日は、久々に東宮様のお召しがある…かもしれない日。


久々と言っても、たった三日間なのだけれど…

欲張りになってしまったわね。


私の期待と不安が伝わったのか、女房達もそわそわと落ち着きがありません。


「まあ、落ち着きなさいませ。

琴などお弾きになれば、また東宮様が引き寄せられていらっしゃるかもしれませんよ。」

そんな弘徽殿の様子を見かねた乳母が、笑いながら琴を差し出しました。

しかしここで「そうか!」と弾くのも軽々しいことなので、代わりに腕が立つ女房達に弾かせました。


華やかな雰囲気に微笑んでいると、

「おや、女御はご見物ですか。

ご愛嬌に一曲。」

なんと、愛しい愛しい東宮様が、そう言って簾を上げて入っていらっしゃいました。