「さて、きっかけは乳母様の代筆のお手紙でした。

それによって女御様の早産を知らされた帝は、当然居ても立ってもいられなくなってしまわれました。

そんな帝のため、夫は宮中とこちらを往復しては女御様のご様子をお伝えしていたのですが、日が暮れた頃遂に帝はしびれを切らしてしまわれたのです。

帝は、夫がお止めするのを無視して、ご自分の使者のふりをして馬で宮中を出ようとなさいました。

しかしそこでばったり左大臣様に出くわし、左大臣様は鋭く見抜いてしまわれました。

左大臣様は、急いで帝をもとのお部屋にお戻ししました。

その時の帝は、本当にもう左大臣様に怒り心頭のご様子だったそうです。

するとしばらくして、席を外していた左大臣様が帰って来て、一目を避けて用意した牛車に帝を押し込め、従者達には、中宮のお使いだと言い、夫を付き添わせました。

そうして牛車でこちらに着き、夫の口利きで、人払いをして右大臣様だけをお呼びし、驚いた右大臣様は女御様の御帳台の周りに控えていた女房達を全員下がらせて、帝を車から女御様の所へお連れなさったのです。」