平安物語【完】




俯いた女性と小さな男の子が入ってきました。


「女御様、右大将の御方様には、お久しゅう存じます。」

よく通る美しい声に、うっとりします。


「お久しぶりですね。

面を上げてくださいな。」


おずおずとこちらを向いた顔を見て、懐かしさに胸が踊りました。

変わりなく美しく凛とした雰囲気の中に、苦労したせいか、たくましい母としての強さが滲んでいます。

身じろぎの一つ一つが上品で洗練されていて、その中に愛嬌もある。

やはり御子の乳母にはこの人しかいないと確信しました。