「単刀直入に言うけれど、私、少納言の君に御子の乳母を務めてほしいの。」
さらっと言うと、今度こそ乳母の手が止まりましたが、黙ったまま道具を片付けた後で私に向かい合って座りました。
「娘をご心配くださるお気持ちは有り難く存じます。
しかし、姫様のお腹にいらっしゃるのは帝の待望の御子です。
そんな高貴な御方の乳母など、私の娘に務まるはずがございません。
私自身、あなた様の乳母にとのお話を頂いた時はとんでもないとお断りしようとしたのです。
まして、帝の御子だなんて…」
渋い顔をする乳母に対し、
「まあ、帝の御子だからこそよ。
こんな高貴な御方には、乳母は何人もつけられるでしょう。
そのうちの一人くらい、私が選んでも良いのではと思うのです。
幼子の母で、私が信頼しているという条件を満たす女人は、少納言の君しかいないの。」
と朗らかに答えました。

