平安物語【完】




翌朝、乳母が私の髪をとかしてくれている時に、ずっと心に思っていたことを乳母に話そうと決意しました。

お腹の御子の乳母のことです。


「ねぇ、少納言の君はお元気かしら。」

突然切り出すと、乳母の手が一瞬止まり、また元のように動き始めます。


「はい……変わりありません。」

少納言の君とは、乳母の次女のことです。

私の乳姉妹である乳母の長女は、常陸の国の国司の妻となって任国へ下っています。

七歳年下の次女も少納言と結婚したのですが、一年前に夫の少納言が死去、当時わずか一歳の息子を連れて乳母のもとへ帰って来たのでした。