平安物語【完】




「それに、この御帳台やあの鏡台などは……亡きお母君様の御形見なのでございましょう?」

泣き出しそうな、申し訳なさそうな表情で私を見ます。

「とんでもなくて、昨夜は御帳台の外で休ませて頂きました。

このような勿体無いものを、私のような取るに足らない者に…。」


…そう、西の対を彩る建具や装飾品の数々は、亡き母上の形見なのです。

父上が椿の上をお迎えした時、父上は、何年も捨てられずに使っていた母上愛用の品々の一切を西の対に移し、全て新調したのでした。

西の対に移した後も手入れをするように、さり気なく指示していらっしゃるので、今もなお趣のある様を保っています。

この事は、椿の上をお迎えなさると伺った時に
『母上愛用の御形見の品々が不要になるようでしたら、是非私にお譲りください。』
と申し上げた時に伺ったのでした。


どんなにさり気なく装っても、椿の上は気づいていらっしゃるだろうと思うと心苦しいのですが、父上は今も母上を忘れきった訳ではないと実感できて嬉しいのが本音です。