平安物語【完】




――翌日

右大将殿が私を訪ねていらっしゃいました。

私は、周囲の視線が異常に気になりながらも、御簾近くに出ます。


「ご無沙汰しております。
女御様には、お変わりなくお元気でいらっしゃいますか?」

「お陰様で、お腹の御子と共に健やかでおります。
ところで…右大将殿。」


あまりに突然すぎるという自覚はありながらも、好機を掴めなくなるのが怖くて切り出しました。


「お願いがあるのです……私の乳母の話をお聞きくださいますか?」