平安物語【完】




――我が家に帰ると、今や遅しと父上が待ち受けていらっしゃいました。


「姫!!!!!

おぉ、またお腹が大きくなったことよ。

さあ、足元に気をつけて。

ゆっくり歩みなさい。

私の手に掴まって。

さあ。」


おろおろと大慌ての父上の手を掴むのは、返って危険なように思われて笑ってしまいました。


「何を笑っているのです?

さあ、もう秋ですから冷えるといけません。

あなたの部屋で、椿の上が采配をふるって支度を整えています。

間に合わなかったのです、申し訳ない。

さあ、椿の上が待っています。

あっ太郎もいるのか?

悪戯などしたら大変だ、すぐに追い払いなさい。」


しまいの方は近くにいた女房に言いつけていました。


「いいえ、父上。

私、太郎君にお会いしとうございます。」

笑いを堪えて言うと、父上は難しい顔をなさっていましたが、「とりあえず、中へ。」と再び急かし始めました。