平安物語【完】




「帰って参られますわ。」

ポツリと、乳母が言いました。

「姫様は、御子と御一緒に帰って参られます。

気を強くお持ちください。

乗り越えねばならない壁なのですよ。

出産で、男の出る幕はございません。

それでも居ても立ってもいられないと仰るなら、ひたすら神仏に祈っておいでなさいませ。」


凛と言うその言葉を聞いて、私も背筋が伸びる心地がしました。


「ええ。

帰って参りますわ。」

スッと微笑んで尚仁様を見ると、尚仁様は呆気にとられたような表情をなさっていましたが、おもむろに微笑んで

「ああ、すまなかった。

待っている。」

と仰いました。