平安物語【完】




「本当に、大変申し訳ないのですが…」

不意に声を掛けられてそちらを向くと、弘徽殿の女房が畏まっています。

「帝におかれましては、もう昼御座(ヒルノオマシ。天皇の昼間の座所。)にお出ましになりませんと、人々が心配いたします…。

早く早くと、帝付きの女房が気を揉んでおります。」


すると尚仁様は溜め息をついて、

「仮病を使って…」

と言いかけるのを、乳母が

「そんな事をなさったら、姫様が非難を受けることにもなりかねません。

お心は嬉しゅうございますが、もう行かれませ。」

と、ぴしゃりと言いました。