平安物語【完】




心臓を鷲掴みにされたような心苦しさを覚えました。

「そうは仰っても、私は…」

―尚仁様が、好きなんだもの。


そう思っていると、

「そんなに、帝が良いのですか?」

真剣な眼差しでそう問われ、私は黙って頷きました。


「私だって、帝を尊敬しもったいないお方と存じております。

またあなた様も心から素晴らしいとお慕いするからこそ、この長の年月、仲睦まじくていらっしゃるお二人を、遠目から拝しては心を抑えていたのでございます。

しかし…帝は、あなたを差し置いて麗景殿様を中宮におつけになりました。

そこには政治的思惑などもあっただろうと存じますが、結局帝はあなた様を二の次になさったのです。

私なら、他の誰より大切にお世話させて頂きたいあなた様を…。

そんな帝が、あなた様を幸せに出来るとは思えなくなってしまったのです。」