平安物語【完】




はあっと一つ溜め息をつき、ぐしゃぐしゃに丸めたい衝動に駆られました。


―こんな、とんでもない横恋慕に悩まされるなんて思わなかったわ。

確かに素晴らしい方だけれど、私は恐れ多くも帝にお仕えする女御なのですもの、間違っても心変わりなんてするはずがないのに…。

浮気な噂の無い方だから、かえって始末が悪いわ。

どうしてこんな事になったのかしら…。



本当にもう頭痛がしてくる思いでしたが、とにかく誰かに見られると非常に厄介なことになりますので、不本意ながら文箱へ仕舞いました。

中には、恋しい尚仁様から頂いた文もたくさん入っています。

軽い罪悪感にさいなまれながら、箱の一番下に入れたのでした。