平安物語【完】




「本当にお可愛らしゅうございますわ。」

私が笑顔で椿の上を見ると、椿の上も幸せそうに微笑んで

「はい、親馬鹿と笑われそうですが、私の腹を痛めたとも思われぬ可愛さのです。

それもこれも、きっとお父上方のお血筋なのでございましょう。」

と言い、私を見つめます。

「まあ、父上だってこんなには…」

と私が冗談を言いますと、女房達がぷっと吹き出し、椿の上も袖で隠しながら控え目に笑います。

「これこれ、全く。

そなたは、こんな姉上のように育ってはなりませんよ。

この父の美貌が分からぬとは…」

すると今度は、椿の上は横を向き、女房達は肩を震わせて笑いをこらえています。

私は横目で父上を見、父上と目配せし合ってクスクスと笑いました。