平安物語【完】




「初めまして、御台(ミダイ。大臣・大将の妻の敬称)様。

早く若君にお会いしたくて、待ちきれずに参ってしまいました。」

威厳を損なわず、しかも高圧的にならないように気をつけながらお返事しました。


「まあ、そうでしたか。

どうぞご覧くださいませ。

女御様の弟君にございます。」

椿の上の言葉を受けて、乳母殿がこちらへ膝を進めて来ました。