平安物語【完】




若君のお部屋の前まで来ると、とても華やいだ雰囲気が漂っていました。

「失礼しますよ。」

そう言いながら入って行く父上の後について私も入って行くと、集まっていた女房達は驚いたように急いで動き出し、私の座る場所を作ってくれるようです。

女房達がいなくなったところから、皆に囲まれていた若君が見えました。

抱いているのは乳母でしょう。

そしてその隣に、裳など着けないくつろいだ格好をした女性が座っていました。


――この方が、父上の…