平安物語【完】




私は、しずしずと廊下を歩きます。

すると不意に
「あ、女御様っ。」
と、後ろを歩く女房に止められました。

「今宵からは、御寝所は清涼殿にございます。」

「あ…本当。」

私は無意識のうちに、通い慣れた昭陽殿へと歩みを進めていたのです。

帝となられた今、尚仁様は天皇の御座所である清涼殿へと移られたのでした。

そのとき雷に打たれたように、尚仁様が帝におなりあそばしたという事実が、やっと現実味を帯びて感じられました。