思わずびくりと体を動かしますと、頭中将殿が「あぁ」と何かに気づいたように言いました。 「私は今から麗景殿様のお屋敷へ参るのですが、女御様も、何か伝言がおありでしょうか。 よろしければ承ります。」 と言うのです。 なんとも馴れ馴れしいことですが、断れば、可愛げのない嫌な女と思われるかもしれません。 直接言うのも恥ずかしく嫌だけれど、離れたところにいる女房を呼びつけるのも大げさですし、かと言って尚仁様に伝言をお頼みするなんて失礼です。