平安物語【完】




弁は頭中将殿と逢うのだろうと思った私は、もう寝ようと思い立ち上がりました。

その音で弁が振り返ったので、薄く微笑んで、帳台へと入りました。


するとしばらくしてから弁も部屋を出て行ったようでした。


その時ふと、嫌な考えが浮かんだのです。

――物語など読むと、道ならぬ恋や不本意な結婚の仲介役となるのは、大抵が男の恋人である女房。

弁なら大丈夫だと思いたいけれど…


自分の顔色が、さっと無くなるのを感じました。