「大変申し訳のないことなのですが、東宮様よりお預かりした、追記の御文をお渡しするのを忘れておりました。 それをお渡ししたい次第にございます。」 普通なら二・三人の女房づてに話すものなのですが、人少ななことが分かっているのか、少し声を張って直接私に言いました。 ――追記の御文なら、挟んであったのだけれど… 少し不思議に思いながらも、弁に受け取りに行かせました。