それからは、私の部屋の女房達も当代随一の美男子を一目見ようと、あちらとこちらを行き来しては素晴らしさについて語り合ったりしていました。
そんな女房達に、はしたない事がないようにと乳母はやきもきしています。
そんな賑やかな中で、一人だけ不愉快そうな顔をして簾近くに座っている女房がいました。
あの、頭中将殿に見られた夜に供として一緒にいた、弁の君と呼ばれる若い女房です。
愛嬌が良くて素直なので、私が可愛がって側近く置いている者でした。
分からないように弁を観察していると、時折、頭中将殿の噂をして喜んでいる女房達の方を睨んでいるようです。

