父上はさぞかし頭中将殿がお気に入りなのか、簾近くに呼び寄せた私の存在も忘れてしまったようでした。 私は早く頭中将殿から離れたい一心で、わざと、座り直して衣擦れの音を立てました。 すると 「あぁ、忘れていた。 今日のあなたは、東宮様の御使者なのでした。 姫に御文を渡して頂かなければ。」 と父上が言い、身分の高い女房を呼びました。 その女房を介して私に御文が届けられ、それを受け取った私は静かに立ち上がって部屋の奥へと戻りました。