平安物語【完】




「そういえば先程、供の女房達が色めき立っておりました。」

「あなたは?」

「え?」

「あの頭の中将を見て…ときめかない訳がない。」

今度は尚仁様が、少し目線を逸らしながら仰いました。

「私は、あなた様の女御にございますれば…」

いまいち仰りたい事が分からず、ただただ思った事を申すしかありません。

「他の殿方を見てときめくなんて、想像にも及ばないのですが…

確かに美しかったかもしれません。

よく思い出せませんが。」