―…尚仁様は、私に申し訳ないと思っていらっしゃるのか分かりませんが、かの姫宮の御裳着については私に何もお話くださいません。
私からお尋ねするのも辛いので、私が情報を手に入れる手段は女房達の噂話だけでした。
「式部卿の宮様の姫宮が、急ぎ御裳着をなさるようよ。」
「ええ何でも、紅葉の上のご容態があまりにお悪いので、紅葉の上がご存命中に裳着を済ませたお姿を見せたいとのお考えだとか…」
「あんなに仲のよろしいご夫婦ですのに、おいたわしいことだわ。」
「姫宮が裳着をお済ませになったら、ご結婚などなさるのかしら」
「紅葉の上のあのご容態ですもの、なさらないんじゃなぁい?」
「そうね…」

