『尚仁へ
我が姫の入内を受けてくれる事、本当に嬉しく思う。
本当に悲しく信じたくない事だが、紅葉の上はもう長くない。
その人が姫の裳着に立ち会いたいと懇願するので、どうしても叶えたいのだ。
もし紅葉の上が儚くなってしまえば、私もすぐに出家する。
可愛い姫を託せるのはそなたしかいないのだ。
しかし、我が姫だからといって無理に寵愛してくれることはない。
並一通りに扱ってくれれば、あとはそなたの心のままにして欲しい。
間違っても、姫のために愛しいあの女御様をないがしろにするような事が無いよう、くれぐれも頼む。
子ゆえの闇に惑う兄を許して欲しい。
明仁』

