――昭陽舎から帰ってきた道のりも、覚えてはおりません。 東宮様は、下腹部が痛む私を最後まで案じてくださっていました。 ―まだ、離れるに忍びない… 迎えの女房にそう呟かれるのを聞いた時、私は思わず涙が零れました。 私も、まだお側にいたい。 …しかしそんな事を言えば軽々しい女と思われるかもしれない。 そう思い、私は東宮様のお顔を見ずに部屋を出ました。 …お顔を見れば、泣いてしまってご心配をおかけするでしょうから…