―…尚仁様の御寝所に侍って、尚仁様が寝てしまわれた時でした。
私はどうも尚仁様の腕の中では胸が高鳴って眠れない性格のため、尚仁様の寝顔を拝して幸せに浸っておりました。
向こうを向いていた尚仁様がこちらに寝返りを打たれたとき…尚仁様の懐から、ぱさりと何かが私の体の上に落ちてきました。
何ということもなくそれを持つと、折り畳んであったそれが広がってしまい、中に書いてあった字が見えてしまいました。
慌てて直そうとすると、つい、『尚仁へ』という字が目に入り、式部卿の宮様からのお文だと気付いてしまいました。
最近見せてくださらない事も気になっていたし、紅葉の上のご容態も気になるしで…私としたことが、事もあろうに尚仁様宛てのお文を開いてしまったのでした

