「私の兄、式部卿の宮の事はご存知ですか?」

「はい。

北の方とただ一人の姫宮を守っていらっしゃるとか…」

「そう、その人です。

その兄上とはよく文のやりとりなどしているのですが、先ほど文が届きまして…兄上がただ一人大切に守っている北の方が、お倒れになったそうなのです。」

「まぁ…」

驚いて眉をひそめて口を覆っている私をちらとご覧になって、辛そうな表情をなさいました。


「その兄上の字の乱れている様子も痛々しくて…」

そう仰って、一枚のお文を取り出されました。