平安物語【完】




「梅壺様から、お文が参られたのですよ。

どうぞ。」

そう言って、梅の花が咲いた枝を添えたお文を差し出してきました。


昨夜私が差し上げた文は、

『紅梅の蕾める様のゆかしきは元の盛りのめでたきゆゑらむ

(紅梅の花の蕾のような姫宮が可愛らしく生い先が楽しみに思われるのは、母君である梅壺のあなた様が、女盛りに栄えていらっしゃるご様子が素晴らしいからなのでしょう)』

という歌をさらりと書き流したのでした。


お返事には、

『時めける春の根元の影故にわろき筋なる梅忘るらむ

(今を時めいていらっしゃる、父親である春宮(東宮)様のお陰様で、あまり優れてはいない梅壺の私の血筋を忘れたかのような姫宮なのでしょう)

あなかしこ』

という歌が、いかにも控えめに、それでいてしっかりとした筆跡で書かれてありました。