「世間では、奥ゆかしく美しい、東宮様ご寵愛の弘徽殿の女御様と誉高きお方でいらっしゃいますのに…
まったくもって心配が尽きませんわ。」
―あぁまたお説教が…眠いのに…
「乳母。
あなた、何か用があって来たんじゃなくって?」
そう言って乳母のお説教を遮ると、乳母はむっとした顔をしましたが、一つ溜め息をついて何かを取り出しました。
―世間では教養高く優しく美しい、弘徽殿女御の乳母の君と評判の自分だって、私の前では形無しじゃない。
他に一人でも女房が控えていれば、見違えるほど気品高く美しい女人ですのに…
私もまた、一つ溜め息をつきました

