「やっぱり天音が最初じゃないとね」

なんのことかと遠慮がちに首だけ振り返る。

「今まで僕の世話係を務めてくれたお礼。本当に助かったよ」

並んだ“手土産”からひとつを差し出し、若が綺麗に微笑んでいた。

「天音はしっかりしてるから、もっと早く好きにさせてやれば良かったかな。僕も結婚が決まった、これからは自分がしたいようにしていいんだよ?家を出るのも自由だし、もちろんどこにいても家族なのは変わらないからね」

愛しむように、わたしから優しく手を離そうとするひと。

「天音にも誰かいい連れ合いができたら僕も安心だよ」

「・・・お気遣い、ありがとうございます。もったいない、です」

両手で受け取ったとき、泣きそうになったのを勘違いしてくれただろうか。嬉しくてつい込み上げたと。不格好な笑い顔で誤魔化せただろうか。

「一生大事にします・・・」

「大袈裟だね天音は」

可笑しそうに笑みこぼした気配。

わたしより二つ下なのに包容力があって懐も広くて。セレブの御曹司に引けを取らないくらい品も知性もあって。雲の上のひとでも傍にいられるだけで幸せだった。

幸せだった。

その若が望むなら。

引き留めないなら。

消えよう。

せめて邪魔にならないように。






手渡されたお礼は、リボンも解かずに仕舞った。若が選んでくれたものだったら、百円のアクセサリーだろうと一生、肌身離さなかった・・・・・・。