血だまりに咲く。 ~序

「晄が出て行けと言ったのか」

「ちが・・・!若はそんなことは一言もっ」

だけど。どこにも空いてる椅子がない、一人あぶれてしまって。

「・・・・・・世話係っていう居場所もなくなるので、いる理由もないです」

言い聞かせるようにつぶやく。

桜井さんが何を言いたいのか分からない。わたしに何を言わせたいのか分からない。

「若の邪魔になるくらいなら出ていきます。初めから分かってたことだし、若には感謝してもしきれないです。だから十分なんです、もう・・・!」

訊かれてもないのに口が止まらなかった。上からどんどん被せて何かを隠すように。

「十分、・・・か。なるほどな」

どこか嘲笑の気配が混ざってた気がした。ただ居たたまれなくて、わけもなく逃げ出したかった。

「・・・桜井さんにもお世話になりました。今までありがとうございました」

手を両脇に揃えて頭を下げた。最後に会えてよかった。何かあったら俺に言えと、いつでも背中を守られてる気がした。桜井さんの存在は小さくなかった。

「今は返せるものが何もなくてすみません。・・・いつか必ず恩返しします」

「返すつもりがあるのなら俺のところに来い」

低い声がわたしを震わせた。下げたままの頭の天辺から電流が走り抜けた。