「これ、松阪との思い出なんですよ」


ふとそれを覗く。



小学校の頃で人懐っこそうな顔つきで楽しそうに笑っている松阪。



中学校の頃だろうか、少し大人びて卒業証書片手に見据える松阪。



そして、高校も同じようにまた爽やかな美青年とも言える顔で笑った彼の姿があった。





「僕はこの写真をーーー撮ることしか出来なかった。ずーっと、十数年間」




「………どうゆうことですか?」





下を向いて、力なく笑う主治医。




「小学校の頃からずーっと十数年間引きこもりだったんです。僕」




全然そうには見えない。



長年の勘からしても、まともな人だなんだろうなと思っていた。




「僕は学校に行けない代わりに、ずっと仲良くしてくれていた松阪の写真係を彼から頼まれました。たぶん僕を気遣ってとの事なんでしょう」



「それって、元々貴方がカメラが好きだったとかで勧められたんですか?」



「それに近いですね。まぁ、結局はアマチュア程度だったんですけど」





思い出の中で笑う彼の目には、挫折めいたものもあってかーーー俺を見ているようで目を逸らした。




「だけどね、彼はいつも私を守ってくれて。意外に正義感の強い人でーーー僕はそれで助けられて猛勉強をして、今ここにいることができた」



「その気持ち、俺もよくわかります。一人で突っ走っちゃう所があるんですよね。松阪は」




優しいだけじゃないのが、彼の魅力のところでもあって。




その優しさを疑うことなく、行動に移せることろすごいと尊敬してしまう。